のったりのたりと

V6の坂本さんを中心に、アイドルさんたちを

ONE MAN STANDING Ⅵ

魅惑のオールドスタイル

 

ラブミーテンダーの余韻を楽しんでいる間に、ステージは暗転して違う音が流れ始めます。おおざっぱに言うとバンドの演奏がオーケストラ風に(楽器の編成は変わらないので勿論バンドの音ですが)という感じです。

天井からはシャンデリアが降りてきて、ちょっとだけ「オペラ座の怪人」を連想しました。シャンデリアは小さめだけど。これから過去にさかのぼるという演出がかぶるのですね。

坂本さんはステージからはけて、長めのオーバーチュア。曲は「MY ONE AND ONLY」のものだったの?かと?思うのですが。ここからはミュージカルの古展的作品からの楽曲が続きます。

 

正直、私は初日にここのコーナーでそうとう頭の中が混乱しました。選曲はすべて坂本さんの出演したミュージカルの中からなのですが、歌い始めるまでこれはどこの曲だ?となるものが多くありました。残念な記憶力だわ。よってここの部分は不確かな記憶をたどりながら書いていることを強調しておきます。(メディア化が望めないのって辛い)

音楽にのって優雅にターンを繰り返しながらステージに現れた坂本さんは黒燕尾です!いやーっ、素敵!この時点でまた脳みそがお花畑モードに突入した模様。(ちょろい自分)黒燕尾、それもぴったりサイズがあってるんですよ!(フォーマルはサイズ大事)ときめきます。首元のタイは白、燕尾のテーラーにシルバーの縁取り。胸元に小さめな白い花のコサージュ。

 

「'S Wonderful」(My ONE AND ONLYより)

白いロングドレスの女性をリードしながらのダンス。ダンスはホールドが基本のボールルームダンスの雰囲気です。歌は坂本さんと女性のデュエットで。

 

舞台では坂本さん演じるビリーの恋が実り、相手のイーディスと二人きりの浜辺でいちゃいちゃと歌い踊るシーンでした。飛行機の不時着で無人島に二人だけになったのに危機感まったくなし。(ラブコメの実写版みたいだった)浜辺で水を弾きながらのタップダンス。

 

今回のステージではダンスの印象が舞台とは違った感じです。歌詞は変わってないかな。

「この世に女は 僕には君だけ~」坂本さんが甘く歌いかけると、

「他の男はもう あなたがいれば‥‥」と女性も応えて、歌と踊りで繰り広げられる愛の世界。

坂本さんが女性をリードして、階段を上って腰をおろし、足をのばしてズボンのほこりをはらい、ここへどうぞというふうに女性を誘うと、となりにしゃがんだ女性がその膝の上に甘えるように頭を乗せて、良いムード。

そうなると自分でリードしておきながらびっくりしたような顔をして、

「スワンダフール~」の歌いだしも、どもるように溜めて歌ってしまう坂本さん。舞台の設定とは違うカップルっぽいけど芝居っけはたっぷり。

「スワンダフル 確かな愛~」

二人で声を合わせて歌いあげ、このままラブラブで終わるのかなと思いきや、女性は笑顔ですっと足取りも軽く坂本さんのそばを離れてステージから踊り去ってしまいます。

残された坂本さんは、納得いかない様子でバンドの人に、

「今の流れだったらねえ」と訴えますが、バンドの人は演奏しないといけないので坂本さんにはかまってくれません。

「聞いとけよ」と坂本さんは文句をつけてみますが、音楽は次の曲へと移っていきます。

 

NEVER GONNA DANCE」(NEVER GONNA DANCEより)

去って行った女性を見送っているとすぐにまた素敵な女性がステージに踊りだしてきます。今度はシーグリーンのドレスの女性がタップを踏みながら登場です。

そして坂本さんの視線もすぐに次の女性にうつって、明るい表情になり歌い始める。次の恋が始まります。(変わり身が早いのね)

「ああ~ 君のいない愛なんて いらない 

もう~ こんな恋とは出会えない 素敵な恋だった

もう僕は 踊らない 愛してる ネバゴナダンス」

ああ~、の歌いだしはやわらかいのに豊かに響き、素敵な恋だった、のところはひそやかにピアノを弾くような声。力をこめて歌いあげるのとはまた違う抑揚の付け方が素敵。

 

舞台の下手から男性が料理を運んでくるようなワゴンを押して登場、大きなクロッシュを開けるとお皿の上には料理の代わりにタップシューズ。坂本さんは歌いながらタップシューズに靴を履き替えて、(靴べらの使い方もスマート)女性と踊り始めます。

 

舞台ではラッキーとペニーが踊ったナンバーです。

「私たちもうおしまいね‥‥」と別れる前の二人がしっとりとせなく踊っていたかと。歌詞は変更がないと思うのですが、ダンスはこちらがボールルームダンスのようにホールドで踊るダンスだったような記憶が。白いロングドレスのペニーが最後はターンしながら去っていき、「僕はもう踊らないよ」と寂しく歌いながらその姿を見送ったラッキーだったと記憶しているのですが、ああ記憶が混乱。

 

坂本さんの歌声は当時より格段に余裕ものびもあります。たっぷりと響いています。タップも軽い感じ。ここのタップは激しさはなくて、カップルの掛け合いで楽しそうに踊る二人。いい感じで踊っていたのですが、相手の女性は最後にはまた坂本さんを置いてステージから去ってしまいます。

 

「MY ONE AND ONLY」(MY ONE AND ONLYより)

立て続けに女性に去られて、ああもう!て感じの坂本さんですが、「ワンツースリーフォー」とドラムのカウントが入り、すぐに次の曲が流れてきます。落ち込んでいる暇はないのです。

ここは本格的にタップコーナー。

アンサンブルさんたちが8人、全員が燕尾服で登場です。女性も燕尾服、迫力のタップシーン。ステージに横並びで、もちろん坂本さんは一人で歌いながら真中でタップを踏みます。ザ・王道、ミュージカルの醍醐味。(と言いたいところですが、最近の大作ミュージカルで、この手のシーンはあんまりないですね)

 

坂本さんの作品でタップの群舞というと、オズの白燕尾での群舞がまず思い浮かぶのですが(こちらは男性も女装してのダンスでした)、この曲を群舞に選んだのはちょっと意外でした。

 

舞台では、ビリーを良い男に導くという、Mr.マジックがメインの曲、なので坂本さん歌ってたっけか?っていうくらいに記憶がないのですが、取りあえず今回は坂本さんメインです。歌ももちろん歌います。

 

「MY ONE AND ONLY 君に夢中 思い受け止めて

二人必ず結ばれる 運命運命 あとは牧師を連れてきて 本命本命」

 

タップと共に歌う歌はリズミカルに軽やか、バックの音はとてもゴージャスに華やか、ボリュームのある演奏ですが、ところどころタップの音を聞かせる部分はピアノをメインに音を絞って聞かせてくれます。

 

歌が途切れる間奏部分で坂本さんは階段を駆け上がり、(このシーンでアステアー♡っと内心叫んだ。階段を上がる時の後ろ足のはね上げ方がとっても素敵だったのです。でもアステア色なタップは一曲前のネバゴナの方がイメージ)階段の中ほどの踊り場に上がり、演奏がストップ。

坂本さんがリードするように一人でタップを踏み始め、アンサンブルの皆さんが応えるように同じステップを繰り返して踏むというやり取りが数回重なって、だんだんステップが早くなりボルテージが高まっていきます。

最後は「ハッ!」と坂本さんの掛け声で、全員で合わせて同じリズムを踏む。迫力のタップシーンです。全員の靴音を合わせてブレイク。

会場から拍手。

音楽が戻ってきて、坂本さんはサビの部分を繰り返して歌います。

「MY ONE AND ONLY 君に夢中 思い受け止めて 思い受け止めて 思い受け止めて」

最後まで歌声を響かせ、最後のフレーズは甘くなり過ぎない感じで締め。

ゴージャスな音楽とタップダンスに拍手。

ONE MAN STANDING Ⅴ

ブレイクタイムと甘い時間

 

全開で飛ばしたロックメドレー、アンサンブルさんたちがはけて、坂本さんはステージに残ります。客席からは拍手。

そして格好良くキメキメの後には、ぜーはーしている坂本さんが一人取り残される。これを見られるのはコンサートの醍醐味ですね。(違うだろう)

まあ舞台だと、ぜーはーしているところは仕舞ってあるわけですが、ここはコンサートなので見せて良いでしょうという演出なのだと思います。

坂本さん、お疲れです。しんどかったようです。それはそうでしょう。フットルースの一曲をフルでやるだけでも相当きついはず。監獄ロックまでまとめ出しすればどうしても厳しいよね。でもお客としては大満足です。というか、それくらいしないとオタって満足しない貪欲な生き物なのです。

V6さんでも、こっちは吐きそうと思うくらい踊ってやっと、お客さんにはちょうど満足できるくらいになると、健くんが語っておられましたね。エンターテイメントの世界って厳しいな。

 

ソロコンとなると、どうしても必要なのはブレイクタイム、給水です。

今回のステージではそのために、ステージ上に小さな丸テーブルと、高めの椅子がセットされています。テーブルの上にはグラスと水の入ったボトルが置かれて、ちょっとバーの隅っこみたいなおしゃれな雰囲気。そして水を注いでグラスを煽る坂本さんの手つきが、お酒を飲んでいるみたいで、なかなか目に楽しいのです。素敵な演出をありがとうございました。

 

しかしここでは優雅にグラスを傾けて見せるような余裕はないようで、やけ酒でも煽るがごとくに、水を飲み干す坂本さん。グラスをあけてさらに水をついでとやっているうちに、客席からはだんだん笑いが。

「がんばれー」という男性の声も会場から飛んでいました。(この日、V6さんから長野さんとイノッチくんが見学されていましたので、その声だというファンの方のレポも見ましたが、残念ながら私には聞き分けられませんでした。オズを観劇した時の、ハードリピーターな男性ファンの声にも似ていると思った)

がっつり給水して「はぁーっ」とはっきりマイクに入るくらいに大きく息をついた坂本さんに、何故か「おおーっ」と反応する観客。確かに息づかいもセクシーでした。

「ミュージカル・フットルース、オールシュックアップ、お楽しみいただけましたか?」

どうにか呼吸を整えて話し始めた坂本さん。観客は拍手でこたえます。

「当時も、ほんとにきついミュージカルだと思っていましたが、14年後、もっときつくなっていました。‥‥‥見る側は良いですよね。当時を振り返っていただけましたか?」

客席、拍手。しかし坂本さん、このへんまでの会話は本当にきれぎれでした。そして、えーっととかあーとかの、繋ぎも入る。けっこうぐだぐだぎみのおしゃべりです。

「オールシュックアップはプレスリーの名曲を集めたミュージカルなんですが、一曲だけね。これも有名なバラードなんですが、愛の告白で歌う所で、何故か好きな美人に本で叩かれて終わる。千秋楽は縦で叩かれました。そんな思い出深い曲を、今日はせっかくなので歌い切りたいと思います」

次の曲の予告に、客席は拍手。

「ちょっと、ちょっと、甘くなりますが‥‥」

曲名を言わなくても、察している方が多そうな客席からは、ヒューヒューと煽る声もちらほらと上がります。

小さな声で聞いて下さいと坂本さんが告げて、曲がスタート。

 

「Love Me Tender」(All Shoock Upより)

プレスリー以外にもたくさんの方が歌われているスタンダード・ラブソングです。予告の通りの、たっぷりと甘い声音で、ストレートすぎる歌を坂本昌行バージョンで。

 

舞台では、坂本さんの演じるチャドがミス・サンドラに愛の告白をしようとしてぶった切られるというコミカルなシーンで歌われた曲ですが、坂本さんのご説明通り毎回きっちり途中までで打ち切られるので、オタ的には最後まで聞きたーい!でも思い切りたたかれるチャドもかわいい!と葛藤していたのでした。

 

今回は止めるものは何もないので、とっぷりと甘い世界に浸るが良いという感じです。

「Love Me Tender  Love Me Sweet 離さないで 俺の人生は君のもの

Love Me Tender   Love Me True 胸の中で 生き続けるのさ いつまでも 」

一番を日本語の訳詞で歌って二番は英語の歌詞でした。並べて聞くとやはり英語の方がおさまりが良い感じです。坂本さん、英語での歌も発音が綺麗な気がします。(こっちにヒアリング能力がないので真のところは解りませんが、言葉として聞き取りやすい)

最後はまた日本語に戻ってサビをリピート。

一番最後の「いつまでも」の繰り返しは、ワンフレーズだけアカペラで、そのあとは伴奏が戻ってきてやわらかなスキャットですっとフェイドアウトでした。

甘すぎるくらいの声で、甘すぎる歌詞を歌っているので、ともすると笑ってしまいそうなくらいですが、ここは素直に浸って聞いておりました。

このストレートさは、古き良き時代の曲ですね。

 

 

 

 

 

ONE MAN STANDING Ⅳ

全開のロックメドレー

 

「Hope」が終わると休みなく次のメロディが流れてきます。暗転したステージの背景にはギターのセットが降りてきて、耳馴染みのあるギターの前奏!

この時点ですでに見ているこっちのテンションは急上昇です。「Hope」の歌いあげを聞いて、ぞくぞくする高揚感にひたっていたところが、スタンディングしたくなる衝動に早変わりです!

どうしても血沸き肉躍る、それがフットルース

もうこれは刷り込みなのです。子供のころに聞き覚えたメロディーが、豪華なバンドの音で蘇る!ああ、立ちたい!踊りたいよ!(我慢しました、大人ですから。でもちょっと身体が動いてしまったかもしれない、反省)

 

「Footloose」(Footlooseより)

アンサンブルさんたちが喜声を上げながらステージに踊り出してくる。みなさんダメージジーンズやロゴTシャツなんかで衣装も若者風ロックテイスト。坂本さんは舞台上でシャツとネクタイ、ジャケットを脱ぎ、Tシャツと皮ジャン風の袖を捲くったジャケットに早着替え。

「I been working so hard!」の歌いだしから、鋭く力強く、クリアーに坂本さんの声が突き抜ける。前の「Hope」で完全に喉が開いた感じ、しょっぱなですっかりやられてしまった。嗚呼、大好きフットルース。会場も手拍子で参加。

 

ミュージカル・フットルース、何が好きだってあのパワーが好きだったのです。初演も再演も、坂本さんも他のキャストの方々も、若くて荒削りだったりつたなかったりする所がある舞台だったと思うけれど、毎回毎回物凄く引き込まれて、カーテンコールが待ち遠しい舞台だった。タイトルどおり、足枷を外して一緒に踊りたい気持ちが溢れた、思い出深い舞台なのです。

スタオベは本当に完璧な舞台にのみ送るものだという演劇好きの方のご意見も解るけれど、この作品でそれを言うのはヤボすぎやしないかなと思ったくらい、毎回毎回本当に客席で盛り上がり、楽しんでしまった。

どうやら坂本さんは気絶したり楽屋に帰れなかったりするほどに、体力を振り絞った舞台だったようなのですが、観ているときにはそんなこと感じなかった。坂本さんの危険なほどのお疲れ具合を真剣に感じたのは、すべてが終わって舞台後にテレビや雑誌で枯れ果てたようなお姿を見たときでした。

ストーリーは、何故かダンス禁止が条例化されている田舎町に引越してきた坂本さん演じるダンス大好き高校生のレンが、クラスメイトたちを巻き込んで、条例を撤廃させるという物語。もちろんラブもついてくる。

 

今回のコンサートでは、アレンジも歌詞も舞台からの変更はなかったんじゃないでしょうか。当時のステージを出来るだけそのままに再現しているように見えました。

歌は英語で入って、2番から日本語訳になる、これは舞台のオープニングの時と同じ。(この曲、舞台のラストシーンでも歌われるのですが、そっちは日本語の歌いだしで別の歌詞)ダンスもできるだけ当時の振付に近く作ってある。さすがにアンサンブルの方のアクロバットなんかは控えめになっていますが、もちろん坂本さんもバリバリ踊ります。映画で有名な両足ジャンプするシーンも、足を振り上げるダンスも再現されます。

坂本さんを中心に繰り広げられる歌とダンスだけれど、ここはアンサンブルの皆さんもおおいに歌に踊りに大活躍。

ボルテージが上がったまま全員でキメて次の曲へ。坂本さんは男性アンサンブルさんと共にいったんステージからはけます。

 

「Hero」( Footlooseより)

この曲は女性アンサンブルの皆さん5人が歌い踊ってくださいます。

アダルトで格好良さを前面に出して歌う「Hero」。

 

舞台では、放課後お店で女子高生たちが、どこかに格好良い人がいないかなとおしゃべりしているシーンの曲です。恋に夢見る乙女たちが自分だけのHero、恋人に出会えることを願って歌っているので、舞台版は格好良い曲でありつつ可愛らしくもありました。

 

しかしこの曲、麻倉未稀さんが日本語カバーして大ヒットしているものなので、聞いているとそっちの歌詞も思い出してしまうと言う罠が。アレです、「Hero 胸に眠るヒーロー揺り起こせ 命より重い夢を 抱きしめて走れよ~」です。これを同時に思い出してしまうという罠にはまる。

実際歌われた歌詞は舞台で披露されたものと同じなんです(たぶん記憶のとおりなら)。「Hero 厚い胸にHero抱かれてみたい その胸に引き寄せられ 唇重ねたい」だったはず。

ですが、この曲に関してはかなりアダルトな歌唱の為、麻倉さんの方イメージか近くて混乱、でも格好良い!メロディの取り方もアレンジされてまして、大人っぽいHero、素敵でした。

 

「Almost Paradise」(Footlooseより)

女性陣の中からお一人がステージに残り、坂本さんが階段から再登場。衣装は下がジーンズに替わってます。ロックに盛り上がったあとは、少女マンガのようにロマンティックなバラードのデュエットです。

 

舞台ではレンとヒロインのエリエルの想いが通じ合う、恋愛パートのクライマックス。夜の鉄橋、列車が通りすぎたあと、瞬く星の下。ずっと君のこと見てたとまっすぐな告白から、二人の想いが歌となって通じ合う。

正直、かつて舞台で見た時にはどの公演でもここのハーモニーはあまり上手くいっていなかった。坂本さんも相手役さんも、自分のパートを歌うのに精一杯な感じで、ハーモニーが揃う所まではいかないなと感じていました。その不器用な感じもまたいとおしかったのですが、やっぱり素敵なハーモニーが聞きたい。今回はその夢がかないました。

 

ステージでは美しいハーモニーが会場に響く。それでいてういういしさも残している、うっとりでした。

もっとテクニック的に上手く飾って歌うこともできると思うんですよ。でも歌い方が素直というか、よけいな飾りがない、それがとても良い感じなのです。受け取るこちら側に、ティーンネージャーの恋を歌っているんだと伝わってきます。心なしか姿まで若く見えてくるのがステージマジックです。

「恋はいつも目の前で 消え去るものと 思っていたけど」そっと低音で入る歌の入りは丁寧に柔らかく。

「Almost Alnost Paradice 君に合えたから 感じあう あのぬくもりを 永遠の輝きにつつまれた Paradice」高音の上ハモも強くなり過ぎないように綺麗に響かせて。

「二人の心抱きしめに もっと側に そばに来て」クライマックスに向かう歌は力強さも加えて。

歌が進むにつれて、二人の距離が近づいて、最後は寄り添いあってバックにキラキラと星が流れて(効果音もアリ)暗転。少女マンガ的ロマンティック、堪能しました。拍手。

 

「Jailhouse Rock」(All Shook Upより)

ピアノの音が途切れた後は、低音のベースとドラムが響いて、再びロックのリズムに戻ります。

坂本さん、たぶんここで上着だけお着替えだったと思うんですが、ジーンズにTシャツ、スタッズ付きの皮ジャンです。

「監獄で開いたパーティー 囚人のイカしたバンドが~」ということで、プレスリーの有名曲。

テレビで披露された曲だったので、セットリストに入っていることは予想していましたが、テレビの時とは坂本さんの歌唱がやっぱり違いますね。テレビではバンドっぽさを意識して、声を響かせるというよりつぶし気味に押さえて歌っていたんではないかな。舞台だと「レッツロック!」あたりで声音が明るく伸びて華やかさが増すし、緩急の付け方ももっと自由自在になる感じです。

さらにさかのぼるとこの歌は昔トニセンでちょこっと歌ったこともあるんですが、あのころからすると、坂本さんお歌がうまくなったんだねとしみじみしたりして。

ここでアンサンブルさんたちが再びステージに戻っていらして、全員での歌とダンス、力強く華やか。冒頭は、坂本さんのソロの歌いだしですが、その後は他の男性陣のソロパートもそれぞれあり。これは舞台の時と同じかな。

バンドのメンバーを煽ったり、歌以外にも声を上げて、パーティームード。もちろんダンスも踊ります、坂本さんは他のカップルのパートナーを奪って踊ったりしてやっぱり主役、格好良いです。

 

この曲に関しては当時の舞台で聞いた時より格好良く感じてしまいました。日本語の監獄ロックを格好良いって思えるかというのは、なかなかハードル高いんですが(そもそもプレスリーはカバーが難しいので)、舞台の時よりノリが良くなった気がします。バンドの演奏の良さものおかげもありかと、あとテンポもちょっと上げているんではないかな。

 舞台ではオープニングに歌われたナンバーなのですが、ミュージカルのわりにあんまり本筋に関係がないナンバーという印象でした。主役の紹介と、プレスリーの曲を使ったカタログミュージカルですよと、お客さんに伝える意味合いの曲という位置づけかと感じていました。

 

今回はバンドの音も厚くなってゴージャス感がある監獄ロック。なのでプレスリーの当時の音と比べるとだいぶん違う仕上がりです。あのオールディーズ感を愛している人だと馴染みにくいかもしれないと思いつつ、個人的にはこれくらいの方が聞きやすくて大満足。

 客席も手拍子で参加して大盛り上がりでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつだって格好良い

V6さんのセンターはと問われれば、やっぱり彼を思い浮かべる人が多いだろう。森田剛くん、いつだって彼は格好良い人。

うひゃうひゃ笑っているときも、何言っていいのか言葉を選べなくて困っているようなときにでも、剛くんは格好良い。

 

でもその昔、オタになる前にV6さんをぼんやり眺めていたころは、ひたむきに踊る子だなというのが一番の印象だった。

当時は本当にセンターで踊っていることが多かったけれど、間奏部分で踊りが難しいパートだと、そこだけトニセンさんが前に出て踊っていることがあって、その短い部分だけ後ろで踊っている剛くんの表情が、とても印象的だった。ひたむきで、年上のメンバーに負けないように、喰いつくようにひっしに踊っているように見えた。

6人6様の踊りの形が出来上がった今では、もうあんな顔をする剛くんを見ることはない。

それはもちろん素敵なことなんだけれど、たまにね、あんなふうにむきになっているみたいに踊る剛くんも見たいなぁと思ったりもするのです。

 

自担みたいにミュージカルというのは、剛くんの選択肢にはないのかもしれないけれど、今の剛くんが得意ではないタイプのダンスに挑むところも見てみたい。

なんでなんだろうな、V6さんで踊る剛くんはいつだって格好良いんだ。けれど、それを越えて、また違う姿の剛くんが見たいって、何でかそんな風に思う。

それだけ剛くんのことは、「踊る人」というイメージが強いのかもしれない。もちろん演じる彼も素敵なのだけどね。

 

森田剛くん、37歳のお誕生日おめでとうございます。

演じる仕事では次々に違う顔を見せてくれる剛くん。きっとこれからも新しい姿を見せてくれるに違いないと思っています。

この一年も、ファンをどきどきさせる格好良い男でいてくれるはずですよね。

それは信じちゃっていますので、どうかよろしくお願いします。

 

 

ONE MAN STANDING Ⅲ

ピアノと共に過去の旅へ

 

「このコンサートを開くにあたって、これまでのミュージカル人生というものを軽く振り返ってみました」という坂本さん。トークと歌で、昔の舞台と当時の思い出をたどっていきます。

全体的にピアノの音が先に流れ出して、それに導かれるように坂本さんの思い出語りが始まり、ワンフレーズかツーフレーズくらい歌うという構成。

 

「タイトル不明」(阿国より)

坂本さんのミュージカル初舞台となった作品です。

「右も左も上も下も前後も解らない状態で、小僧がプロの稽古場で何が出来るかって、何もできない」そこにいるだけだったと力のなかった自分を語る坂本さん。

♪「ほんとのこと言~え~ば~ 辛くて泣きそうな~の~ 毎日毎日ひもじくて~ お腹がぐう~っとな~る~の~」

舞台で歌ったという一節を歌ってくれました。

 

ミディアムテンポでメロディは歌詞ほど暗くはないけれど、なんだかぐさっと心に残った歌でした。

実際に舞台で歌ったとおりの歌詞だそうですが、その歌詞がその当時の坂本さん自身を歌われているような歌詞だと感じたそうです。

お金もなくてアルバイトをしたりしながらのジュニア時代、実際にひもじい訳ではなかったでしょうが(実家暮らしだし)、気持ち的には先が見えないなかで過ごす毎日の閉塞感が、歌詞にリンクするのでしょう。「でも阿国の稽古場にはずっと車で通ってました」とオチを付ける坂本さんなのでした。辛いことは、笑い話に変えちゃうんだな。

 

この頃はまだオタではなかった私、当然この作品を見ていないのですが、前にBSでダイジェストで放送されたものは見ていました。坂本さんは脇役ですから、そんなに映っていなかったのですが、主役の木の実ナナさんの演じた阿国が個性的で面白かった印象です。

阿国を題材にしたミュージカルはまったく別の脚本で作られたものもありますが、坂本さんが参加されたこの作品は、阿国をあえてきれいに描かないところが印象的でした。歌舞伎の祖というよりも、あくまで河原者として、当時の社会の下層でたくましく生きぬくエネルギッシュな女を描いた作品です。

 

やさしさに包まれたなら」(魔女の宅急便より)

ピアノの音をバックに、ここはトークだけ。

この作品で坂本さんが演じたのはトンボですね。デビュー一年前に出たミュージカル魔女の宅急便。テレビでしていたダブルキャストのお話はこれかな。プレゾンでもダブルキャストだった作品はあるけど、たぶんこっちだろうな。

ユーミンさんに会えるんだ、ユーミンさんが作った曲が歌えるんだ、とわくわくして顔合わせに行きました」という坂本さん。

「稽古場のドアを開けました!居ましたっ!蜷川さんが‥‥」蜷川さんがオチで良いのかな?

「それから稽古期間、蜷川さんとの大切な時間の中に、たくさんの言葉をいただきました。ということで、そのなかの一つをご紹介します。「馬鹿、死ね、帰れ」人生であんまり言われることはない言葉ですね」としみじみする坂本さん。ここまで言われたのは蜷川さんだけだそうで。でもそんなお言葉が大きな糧となって今ここに立てているのではないかというようにお話されていました。

今はご病気で入院されている蜷川さんが、早く復帰されますように願っていますとそえていらっしゃいました。

 

「Sixteen Going On Seventeen」(Sound Of Musicより)

「実はデビューする前にもブロードウェイミュージカルにださせていただきました。それがサウンドオブミュージック。役は17歳の郵便配達員の役。V6がデビューしたころ、だいたい16、7、というと森田くん。剛がそれくらいということで、その時の気持ちを歌いたいと思います」とその気持ちを坂本さん、替え歌で一曲。

 ♪「おまえはシックスティーン もうすぐセブンティーン 言うこと聞けよっ」

 

ええと、この作品は当時は東宝で定期的に再演されていた印象ですね。大地真央さんの主演時代。坂本さんの役はトラップ一家の長女の恋人役。この曲はとても可愛らしい初々しいカップルの逢引きシーンで歌われる曲なのです。当たり前ですが反抗期を歌った歌ではありません。

彼氏がちょっと背伸びした感じで年下の彼女に歌うとっても可愛らしい曲です。そのまま歌うのは恥ずかしかったかな。

 

今回は替え歌で、V6さんの始まりのころの剛くんとの微妙な関係を表してみたようです。坂本さんが自分の歴史を振り返るという意味合いかな。

坂本さん「言うこと聞けよっ」が秀逸。怒鳴る感じではなく、いらだちを噛みしめるように歌ってました。当時の心境をおしはかってしまいます。

「自分でもなんでこっちの手を握っているのか解らない。何か思いがあったんでしょうね」と言いながら、マイクを持っていない方の手で、ズボンのお尻の方をぎゅっと掴んでいました。

大変だったんですね、きっと。でもそれも笑い話に変えて、剛くんの映画、「ヒメアノール」が5月公開とお知らせ。いまいち反応が薄い会場に、「興味ない?」と心配しながら「ぜひ皆さんご覧ください」と宣伝をするリーダーさんなのでした。

 

シェルブールの雨傘・主題歌」(シェルブールの雨傘より)

タイトルこれで良いのかな?とにかくシェルブールと言えばこれという、一番有名なフレーズを替え歌で。

♪「初め~ての主役だぁ~た とにか~く台詞がぜ~んぶ 歌だ~け~のミュージカルだったのに~ この歌しか覚え~ていない~」

せつない歌声です、歌詞はともかく。客席から笑いと最後に拍手。

 

舞台では、ヒロインが坂本さんの演じるギイに、「モナムール モナムール行かないで」と歌う歌です。戦争に行かないでとすがるヒロインの歌に重ねて、ギイは「ジュテーム ジュテーム」と歌っていました。

 全編歌のミュージカルということで、坂本さんはとても難しかったと良く語っておられますが、個人的にはそれがとても良かったと感じた作品でした。坂本さん、お歌の方が台詞より言葉がクリアーな気がするんですよね。初演の時のういういしいギイ、大好きだったなぁ。(また話が逸れた、失礼)

 

「主演しました、初主演、これ有名な曲ですよね。これしか覚えてないって、これぼく歌ってないんです。ぼくが歌ったのもちゃんと覚えています」ということで気を取り直して、

♪「ワイン、もう一杯」

 

舞台では足を痛めて戦地から戻ったギイが、恋人の心変わりを知って酒と女におぼれるというシリアスなシーンなんですけど、会場のお客さんたちは思わず笑ってしまう。

 

当時、イノッチくんがさんざんネタにして良くマネしていたので、V6さんのオタ内で有名なネタ化しているのですよね。坂本さんのオタ内では「来たんだ、召集令状が」がはやりましたね。コンサートや舞台のお知らせが来るとこのフレーズをつぶやくという。

ちょこちょこ笑いが起きる会場に、「このへんは爆笑を求めていないのでさらっと聞いていただければいいです」という坂本さん、さくっと次に進む。

 

「My Best Friend」(BLOOD BROTHERSより)

 「それから数々のミュージカルに出演させていただいて‥‥」坂本さんが主演した作品のタイトルを一つ一つ並べて行きます。「素数々の敵な作品との出合いました。最高のスタッフ、最高の仲間、キャスト、そして何人か友達、ベストフレンドと呼べる仲間もできました」ということで次の歌。

♪「マイベストフレンド いろんな話 舞台のこと たくさん知りたい~ 俺もなりたい 舞台のまんなか 輝くミュージカルスタ~に~」

 

うーん歌詞が思い出せない。歌終わりに「なれましたかね?」と、ちょっと格好つけて聞いちゃう坂本さん。お客さんは拍手で応えますが、「すいません。あざといフリでした」とあやまっちゃってました。格好つけっぱなしは、恥ずかしいのかな。

 

これも舞台で歌った時とは歌詞が違います。「マイベストフレンド~」の歌いだしは同じだったかな。坂本さんの演じたミッキーと双子のエディ、別々に育てられた双子が出会う子供時代のシーンで歌われた歌ですね。ちびっ子時代、可愛かった。

ブロードウェイ物が多い坂本さんですが、ブラッドブラザーズはウエストエンド物。そしてイギリスが舞台の社会性の強いミュージカル、とても重たい作品ですよね。バックボーンを入れておかないと日本人的にはその結末に共感するのが難しいかなと思ってしまう、受け取る方も気持ちの持って行き方が難しい作品でした。

演じる方も準備が必要な作品だったのでしょうね。坂本さんが2泊4日の強行日程でウエストエンドに行ったというエピソードも当時、印象的でした。しかし、脚本と台詞の無駄のなさは秀逸な作品です。

 

そしてこのコーナーもそろそろ終わり。

「今日もたくさんの仲間と、皆さんに喜んでいただけるようにがんばっていきますので、どうぞよろしくお願いします」と綺麗に締め。

 

「Hope」(Zorro The Musicalより)

最後はこの曲。ピアノの音に乗せてゆっくりとした歌いだし。

途中からテンポが上がって、ピアノ一本だった演奏にバンドが加わっていき迫力の演奏へ。

坂本さんの歌も、語るようなものから、本格的な歌唱へ。ボルテージが上がっていき、客席も空気が変わります。トークの時間は終わり、自然と歌の世界に引き込まれて行きます。

 

舞台ではゾロの中で唯一と言っていい、ディエゴのソロナンバーでしたね。捉えられて地下に入れられたディエゴが、それでも希望を失わないと歌う決意の歌です。

坂本さんのミュージカルでは一番の長丁場だった作品。運動量の多い舞台でもあったので、相当体重も増量してのぞんでいた坂本さんも、終盤では身体が薄くなっていきました。歌い上げ系という感じのこの曲を歌うのも大変そうで、観劇した時々で、歌い方を変えたりもしていた印象です。

 

舞台で聞いた時には、苦しみの中の「Hope」、この場所では希望を前面に打ち出した「Hope」だと感じました。歌詞も変更されています。

声が出るところまで、限界をふりきるように思い切って歌いあげているような歌、こんな歌い方は普段は聞けない。そしてその声音の明るい伸びやかさは、やはりディエゴではなく坂本さんのものだと感じました。

 

♪「もうこれで おしまいだと 何度も思った 絶望の暗闇を さまよっていた でもいつかきっと 俺は必ず 見つけられると信じた 一人じゃない かすかな光 それはHope 明日への希望

歌い続けろ 踊り続けろ 見えなくても この心に刻みこんで 信じ続けよう

信じていよう 見つけてみよう そして生きて行こう いつかあの空を 追い いつか」

 

歌詞はなんとなく覚えている部分だけのニュアンスです。フルで歌ってくれたので、もっと長かったですが覚えてられない。(残念)最後は一音一音、区切るように力強く歌いきってステージは暗転。

 

 

 

 

 

ONE MAN STANDING Ⅱ

ご挨拶のトーク

 

オープニング2曲をパフォーマンスした後、アンサンブルさんは退場。坂本さんのご挨拶とトークのコーナーに入りました。(曖昧な記憶とメモだけで書いてますので、ニュアンスだけくんでください)

「皆さん今晩は、ようこそオーチャードホールへ」

軽く息切れしたまま話し出した坂本さん、声が張れてない。基本トークのお声は小さめです。映像仕事でも舞台の時みたいに声を張ってしまうとこのあいだのテレビで言っていたけれど、ここのステージではそういうモードではないらしい。(もうちょっと声張ってもいいんだよ?)マイクが両手持ちになっていたり、背中がちょっと丸まっていたり、心なしか緊張感が漂っている気がいたしました。

6人さんのときだとマイクは片手で、片足に重心をかけたリラックスした立ち姿が多いと記憶しているのですが、どうも雰囲気が違います。

ダンスで乱れたズボンの裾をまっすぐに直してみたり、それに客席がくすっと笑うと「ちゃんとしたいんです」とおっしゃっいました。

 

今回のコンサートの趣旨、ミュージカルの歌と最高のダンス、素敵な音楽をお届けしたいということをお話しされ、音楽を支えてくれるメンバーをご紹介。

「まずは音楽監督、羽毛田丈史さんです。そして、ワンマンスタンディング・オーケストラの皆さんです」

立ち上がったオケの皆さんは、「気おつけ、礼、着席」と坂本さんの声に合わせてご挨拶。客席は拍手と軽く笑い声。

羽毛田さんは凄い方だということで、手がけられた作品などなどを紹介。

ハケタさんをハタケさんと言い間違いそうになる坂本さん。

映画、ドラマ、ドキュメンタリーと幅広い音楽を手掛けておられる羽毛田さん。ジャニオタが知ってそうなところで、「池袋ウエストゲートパーク」、岡田くんの出ていた「D×D」などを上げて紹介してくれたのですが、

「岡田の名前を出したのに反応が薄い」と予想外だったようで驚く坂本さん。客席はへーっていう反応でした。ええっと、たぶん会場にいる人の大半は坂本さんのオタですからね。作品もけっこう昔だからね、知らない人もいらっしゃるでしょう。

「岡田の名前出したら盛り上がると思ったのに。初主演ですよ」と坂本さんが重ねて言うので、会場からほーっと言う声と拍手。他に有名どころとして、葉加瀬太郎さんのお名前を出すとそっちのほうが会場のリアクションが良い感じ。

「岡田が聞いたらショックうけちゃうよ」とぶつくさ言っている坂本さん。

 

それからも羽毛田さんの方を向いて、ピアノの近くでしゃべりかける坂本さん。軽く客席放置。

「ジャニーズのアイドルとこういう形で共演するのは初めてですか?」というような質問をしようとするのですが、ジャニーズのアイドル‥‥‥というあたりで、客席からなぜか笑いが起きる。

それに引っかかったらしい坂本さんは、客席の方に向き直ってマイクを下して、嗚呼って、軽く怒ったようにすごんでみせる。客席はフウーっと煽りを入れたり拍手したりで坂本さんの御機嫌を取るのでした。

「フウーっが古いでしょう。そこが好きなんです」

気を取り直して、坂本さんはふたたび羽毛田さんに話しかける。

「ジャニーズの、現役の、‥‥‥アイドルとこういう形で共演されたことってありますか?」

アイドルって言うところで、客席からは笑い声が聞こえておりましたが、そこはもう無視する坂本さんです。

羽毛田さん、映像作品はあるけれど、ステージは初めてですねということでした。

「僕の名前を聞いた時、どう思いました?」と聞く坂本さん。

「あっ、V6の人だなって」

羽毛田さんのお答えはいたってシンプル。

「V6の人だなって、それ商店街でよく言われるやつ、おばちゃんに。ああ知ってるV6の人って、その後、続かないんです」

坂本さん笑顔だけどちょっとしゅんとする感じ。うーんそうですね。まあそういうものですよね。うん、解る。

 

他にも羽毛田さん、これもなんだと思うような名曲を手掛けてあるということで、でもちょっと古い名曲だからどうかなぁと、客席を確める坂本さん。すぐに大丈夫って判断しちゃって、ワンフレーズお願いしますとピアノをリクエスト。

弾いてくださったのは、「恋に落ちて」。会場からもおーっと良い感じの反応。前奏を弾いて坂本さんが歌おうかというふうにマイクを構えた所で、演奏を止めてしまう羽毛田さん。

 

坂本さんは羽毛田さんのことをもっととっつきにくい人だと思っていたらしいですが、こうしてお近づきになれると間口の広い方で、お話していて楽しいそうで、「このまま話してましょうか?」とか言ってみる坂本さんですが、羽毛田さんも「いいですよ、そっち方がラクだし」と軽くのってしまうので、「俺もそっち方がラクです」と言いながらも「やっぱりもったいないから」と坂本さんが方向修正。「素敵な音楽をお願いします」ということで、ここらへんから歌に戻っていきます。

 

なんというか全般に、坂本さん、羽毛田さんがいてくださって良かったねっていう感じでした。

 

 

 

ONE MAN STANDING Ⅰ

オープニングは華やかに

 

初めて入ったオーチャードホールは、クラシックの殿堂と言われるのが解る天井の高さでした。緞帳も大きく、重厚感のあるホールですね。

今回のコンサートは、この大きな緞帳の上部分に、歌われた楽曲のタイトルと、作品、上演年がふわりと明りで表示されるという、とても親切でありながらお洒落な演出がありましたのですが、初日に入らせていただいた私は、まるっきりこれに気付きませんでしたよ!(視野が狭い)初日はどうやらひたすらにステージだけをガン見してしていたようです。

 

30分前の開場、早々に座席に着いたのは良いのですが、暇。

いつもはパンフレットを読みながら開演を待つ時間、今回はパンフレットも物販もないので、ひたすら待機。

なんだか落ち着かない。お連れさんもなんだか緊張気味で、会話が弾みません。(苦笑)お客さんで見に来ているわけですからこっちが緊張するような筋合いはないのですが、何故か初演の舞台を見る時よりも緊張してしまっていました。

どんな始まりなのか、どんな公演になるのかと思いをはせながらも、目の前に開演時間が迫っていると、気軽に予想するような心境にもなれず、ひたすら待機。

 

やがて幕の向こうから軽く楽器の音合わせが聞こえてきて、それもやみ、客電が落ちると、自然と会場がふっと静まりました。

 

ドラムロールが鳴りだすと共に、幕が両サイドに引き上げられるように開き、「レディース&ジェントルマン~」と客席にショーの始まりを告げる声が響く。

全体にダークブルーを基本とした照明の中、ステージの奥を締める大きな階段、両サイドに並ぶビッグバンドの皆様。その外側に街灯が数本ずつ左右に並んでいる。ピアノはステージの下手側。階段、センターの最上部に軽く踊れるくらいの空間、階段の中ほどにも踊り場があります。

中央の階段の奥にコンサートのロゴマークが大きく浮かび、バンドの方の足元にも同じロゴのカバーがが飾られています。

オープニングを飾る楽曲は、聞き覚えのありすぎ。

 

「Not The Boy Next Door」(THE BOY FROM OZより)

思わず息をのみました。

オズのオープニングと同じフレーズでスタート。バンドの皆さんの演奏も素晴らしく、オズ、初演の感動が瞬時に蘇ります。あのときのバンド演奏も素晴らしかったのですが、今回も素晴らしいよ!

 

オズの舞台ではこのイントロ部分の演奏からテンポを下げて別の曲に繋がるのですが、今回はそのまま両そでからアンサンブルの皆さん方がステージに踊りだしてくる。男性陣はブラックスーツに白シャツ、細いブラックタイ。女性陣は黒を基調としたショーガール風の衣装、黒い網タイツにハットとアダルトないでたちです。

そして歌に入るとき、階段の上段にスポットライトを浴びた坂本さんがさっそうと登場。衣装は記者会見の時の光沢のあるダークネイビーの細身のスーツに、細い黒のネクタイ。スーツは影になる部分はブラックに見える、光沢はあるけど渋い布地。

歌い始めたのは「Not the Boy Next Door」です。

 

舞台では一幕最後に歌われたこの曲。「俺は特別な男さ」と歌ったピーターは、このとき妻と別れ仕事もなくて、故郷のオーストラリアに戻っている。彼の手元にあるのは自分の信じる才能とそれを信じてくれる母親の愛情だけ。

現実的にピーターがアメリカのショービジネス界で成功を掴むのはその後のお話です。ピーターは一人ステージをかけながら何かに挑むように少し粗っぽく、強く歌っていたように思います。

 

坂本さんは階段を下りながら、途中踊り場のところでしばし歌い、舞台に下りてきて豪華なアンサンブルメンバーの中心で歌います。途中からはダンスにも加わり、華やかなショーのスタート。

坂本さんの歌声がピーターとして歌っていたときよりも声音が明るく、軽やかに抜けるように響いて聞こえる。歌詞は舞台の時とは翻訳が変わっています。

「夢に見たこの場所、俺は一人立ち」

この歌の中の男は夢を掴んでいざその場所に立った上で、「だれもマネできないただ一人の男さ」と歌っている。

 

この曲を、初めてのソロコンのオープニングで、坂本昌行さんが歌うんだな。(すでに感無量)

ピーターではないんだと、あたりまえだけどこのコンサートの方向性をオープニングではっきりと意識した。

一曲目を歌いあげ、客席から拍手を浴びた坂本さんは、すぐさま次の曲へ。

 

「You  Mustn't  Kick It  Around」(Pal  Joey)

続けて披露された曲は小粋なナンバー、ここでは男性アンサンブルさんがはけて、女性アンサンブルさんと坂本さんで歌い踊る。

 

舞台では坂本さん演じるジョーイとクラブの女の子たちが次々からんでいくダンスシーン。男性キャストとも踊ってたっけ。歌は途中から女性キャストが引き継いでいたのでジョーイの歌は、残念ながら自分の記憶ではそこまで鮮明に覚えていなくて、逆に新鮮に聞きました。

 

このステージでは坂本さんがまるっとソロで歌ってくれる!

黒い網タイツ姿のもセクシーな女性アンサンブルの皆様に囲まれて、軽く絡んで女性陣にきゃっと声を上げさせたり(演技です)、いたずらっぽく笑みを見せたり。

女性陣と並んで腕を組み足を上げて踊る坂本さんはジョーイよりちょっとおちゃめな表情に見える。さりげなくやっているけれどなかなか運動量が多いダンス。歌いあげ系ではなく、あくまで小粋に魅せて聞かせる歌。レトロ感があるけれど、音楽のアレンジのおかげで古臭くは感じない。

今、こういう歌をテレビサイズで見られる機会ってほんとに少ない。というか最近のミュージカルの主流でも、こういう系統の歌やダンスってあんまり見られないから、とっても希少な気がして見いってしまいまいました。

歌詞はべったべったに甘ったるい。「悲しい時には俺がいるから~甘えなよベイビー~」っていう感じです(適当)。歌い方はソフトに、優しいけれどあまくなりすぎないラインを保ってます。やりすぎないのが坂本さんらしい。

 洒脱な感じ、素敵です。